蓄電池設定によるハイブリッド列車特性の変化

蓄電池搭載のハイブリッド型内燃車両では電池の使用方法を設定することで回生エネルギーの用途、充電方式を指定可能です。それに応じて列車の走行特性が変化します。

これを試すため本製品の仮想車両設計機能を使って蓄電池搭載のハイブリッド型ガスタービン機関車牽引列車を規定値のまま作成します。列車出力は常用2000kw、最大3000kwとし、発電機に2000kw、電池に1000kw負担させるため蓄電池の用途を「ピーク出力増大」に設定しておきます。
次の図はその引張力曲線で、2つの曲線からなり、引張力の強い濃い黄色の曲線は蓄電池の電力とエンジン発電機を併用して得られる電力で走行した時のもの、薄い色の曲線は電池が空でエンジン発電機単独で走行した時のものです。

蓄電池の用途を「燃料節約」で作成した列車と特性を比較してみます。 ガスタービン発電機出力は2000kw、電池出力は1000kwと上と同じですが、列車は2000kwでの運転となります。
下の図の赤の曲線がこの列車の引張力曲線で、起動引張力が低くなっています。起動引張力の差は電動機、制御器の性能差からくるもので、ピーク出力増大に対応した、より強力な装置を搭載した列車では過電流負荷に対応しているためです。
この列車の場合、電池残量がある場合は電池出力1000kwを主に使い、所要の列車出力2000kwに対して不足する部分をエンジン発電機で補う運転となります。
そのため制動時などに回生した電力が電池にたまっている場合、エンジンは1000kwまでの出力で運転できますので燃料消費を削減できます。

電動機、制御器の強化は列車重量に影響します。 過負荷運転は電池の容量制約から短時間となりますので重量の増加は少なめですが加速力曲線では若干の加速力低下が生じます。
下の図が加速力曲線です。
これではわかりにくいですが、

拡大すると黄色の曲線がわずかに赤より下になっているのがわかります。
これが重量差による加速性能低下です。

両者の同時走行シミュレーション例を見てみましょう。

これは両者とも電池の用途を運転条件の設定で燃料節約に設定した場合の運転曲線です。時間曲線を消して燃料消費(青)と電池充電量(赤)の曲線を見やすくしています。
ピーク出力増大に対応した列車は起動加速力が良いため起動直後出足が良く、その分燃料消費も多くなっています。
4.4km付近から下り勾配抑速、駅停車で生じた回生電力が電池を実効容量の80%まで充電します。
この例では列車出力2000kwに対して電池出力が1000kwに設定されていますので八浜駅からの発車はエンジン発電機負担が1000kw、電池負担が1000kwで発車可能となります。
八浜駅発車後は80km/hあたりまでこの電池電力のアシストを受けながら加速されますが、起動時に高出力を発揮するピーク出力増大対応列車は電池切れが早く起こります。

次に電池をピーク出力増大に振り向けた場合を見てみましょう。設定は下図のところで行います。

本製品では電池初期値が0に固定されていますので始発駅では両者とも電池残量が無く走行に変化はありませんが、次の八浜駅ではピーク出力増大効果が出ます。
 
しかしこの線区ではそれ以外の区間で効果が出る部分は少なく、出力増大効果はあまりありません。
回生電力不足を補う方法はいくつかありますが、列車の設備変更なしに出来るものとして惰行中にエンジン発電機で充電する方法があります。

惰行中充電にチェックを入れ、電池の有効容量の70%までエンジン発電機による充電を許可してみます。

これにより惰行開始時点からエンジン発電機は1000kwで発電して電池充電が始まり電池の充電率が向上します。次の力行時には電池によるピークアシスト効果が長続きして加速性能は向上、時分短縮が可能となりますが燃料消費は増加します。

大量の電池を搭載するのは経済面も重量面でも実用的ではありません。そこで電池の出力を大きくするとどうなるかみてみましょう。大出力発生可能な電池は大電力で充電可能になります。
列車の運動エネルギーは巨大で、一般にはこれを一気に電池で吸収できません。そのため制動時はこのエネルギーのうち電池の充電能力を超えたものは摩擦ブレーキに分担させ捨てる事になります。この場合、同じ容量の電池でも充電許容電力を上げればより有効に電力を回生できることとなります。
この特性に優れているのがキャパシタやフライホイールです。
上の例では列車出力の半分に電池出力が設定されていますが、電池容量は変えずに出力を倍にして試したのが次の例です。
運転は燃料節約モードとし、ピーク出力増大に電池出力を割り振りません。

これを見ると制動時の充電量が大きく向上し、しかも発車は電池出力のみで可能ですので発車後しばらくエンジンはアイドル時の燃料しか消費しない時間ができています。

 このように電力回生機能を持つハイブリッド内燃車両では電池や発電機の使用方法、列車の運転方法、運転区間の線形、さらに電池容量、発電機出力が関係しその組み合わせは複雑になります。運転時間短縮重視、燃費重視など目的に応じて最適な組み合わせを探ることとなります。

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