原動機と動力伝達機構の特徴

 

動力源

伝達機構

特徴

電力

古くから車両用動力源としての優秀さは抜きん出たものがあり、固定軌道を走行する鉄道では外部からの電力供給設備が必要という弱点にもかかわらず広く普及しました。
初期の直流電動機の時代から他を寄せ付けない高効率が特徴で、しかも軽量性に優れるため高速列車では当時からほぼ独壇場という状況で、ガスタービン動車以外に対向馬がない状況が続いています。
さらに近年、VVVF制御により交流電動機を効率よく制御可能となってさらにこの特徴が際立つこととなりました。部分負荷でも効率が高く、広い負荷変動に対して高効率を期待出来ます。

技術革新は続いており、永久磁石電動機や炭化ケイ素、窒化ケイ素などの新技術が実用化されつつあり、より一層効率が高くなっています。
往復動式蒸気機関同様、車輪を減速機構なしに直接駆動できるものもあります。
欠点は電力供給の地上設備が高価で、ローカル線ではその維持管理費すらも問題となります。
また、大電力給電に適した交流電気車では低周波の変圧器が大型となる点が高速鉄道では不利で、高耐圧半導体による直接降圧技術の実用化を待っている状況です。

ディーゼル

 

ディーゼルは重く大型ですが高速ディーゼルは比較的小型で気動車に適しています。
内燃機関の中では最も効率が良い部類に入り、部分負荷でも効率が比較的高いのが特徴です。
電化設備が不要で運転コストが小さいためローカル線から低中速域鉄道に適しています。
高出力ディーゼルでは微粒子の多い有毒排気ガス、低周波騒音、振動は未だに未解決の問題となっています。 
液体式 単一コンバーターではごく狭い範囲の速度・出力で80-85%程度の伝達効率を得るのがせいぜいで、広い速度域で利用するにはフォイト式3組変速機やメキドロ式歯車変速機を必要とし、装置の大型化、複雑化が避けられません。
熱損失が大きいため専用の冷却機構を必要とし大型化しますが、大容量の放熱機構を持たせることで抑速ブレーキ装置として活用できる利点も生じます。。
直結多段変速機付き液体式 近年の気動車では損失を減らすため液体変速機の使用を起動から低速に限定しています。それ以降は速度と所要牽引力に応じて直結クラッチと歯車変速機が作動して効率を維持します。これにより液体変速機の使用は短時間となり少容量のものですみ、全速度域を液体変速機で運転するシステムに比較して軽量化も可能です。
変速段数は加速性能に影響し、多いほど理想の定出力曲線に近づきますが、歯車切り替えに加速中断が生じる問題があります。
加速中断を最小限にするにはPDKのような追加機構が必要となります。
また、大出力になると変速時の変速機構の損傷が問題となり、非常に精密な回転数制御や流体継手の併用が必要となります。
電気式 電動機やその制御技術の進歩で電気式ディーゼルも液体式に迫る軽量化が可能となり、効率ではすでに液体変速機を凌駕しているためより普及する可能性があります。
蓄電池搭載によりディーゼルの持つ有害排気、振動、騒音を間欠的に緩和できますが、両者とも重量、容積が大きいという問題が残ります。

ガスタービン

 

ガスタービンは軽量、低振動、多種燃料対応、清浄排気を特徴とし、変速機無しで車両を駆動できるトルク特性も持っています。
騒音は高周波成分が主体のため消音しやすく、低振動と相まって上質な客室環境提供という点ではディーゼルより有利です。
近年のガスタービンは効率の改善が進んでいますが、鉄道車両用途程度の小型のものではディーゼルより悪く、特に部分負荷運転、アイドル状態で問題があります。再生式ではこの欠点が軽減しますがそれでもディーゼルには及びません。
コンバインドサイクルや高湿分吸気方式ではディーゼルを超える効率となりますが、ガスタービンの小型軽量易運転性など利点が失われ、車両用には適しません。
高速鉄道以外では一般的で頻繁に起こる、大きな負荷変動に対する追従性が悪く燃費悪化の一因となります。
高速回転機関のため複雑な減速機構を要し、吸排気流量が往復動式内燃機関と比べ圧倒的に多いため配管や消音器が大型になります。
昔から軽量高出力を活かせる高速鉄道用として度々期待を集めてきたものの、運転コスト面が支障となり営業に至ったものはありません。
機械式 軽量で低損失が特徴です。
2軸式ではストールトルク比は2を超え、車両用として設計点の150%の回転数を許容して製作されたエンジンの場合、起動引張力は最高運転速度での引張力の4倍近くになります。初期のガスタービン自動車ではこの特徴を活用して変速機構そのものを省略しています。


変速機を併用した場合、低速での引張力改善、燃料消費改善、ストール発車時の騒音低減効果を生みます。アメリカ陸軍のM1 Abraham 戦車やY2K ガスタービンバイクでは変速機が併用され、上記のトルク特性のため往復動式機関搭載の類似車両に比較して変速段数が非常に少なくなってます。

電気式 電気式では機械式で問題となるガスタービンの高速回転、部分負荷特性、ストール発車時の高騒音などを解消出来ます。
特に高速回転の交流発電機を減速機構なしにガスタービンと直結した場合、非常にエネルギー密度の高い電源を実現出来、蓄電池技術が進歩すると高性能ハイブリッド車両を開発できる可能性があります。

ハイブリッド

車上に2時電池を搭載することで内燃車両にエネルギー回生機能を付与できます。さらに内燃機関の持つ多くの欠点も低減できます。エネルギーをプールできるためエンジンは最適状態で運転でき、アイドリングストップ機能も実現でき、燃料消費低減が可能です。車両用に適する蓄電池はいずれも高価で、搭載容量に自ずと限界があります。また、高速列車では重量増加の面で不利となります。
リチウムイオン二次電池  高エネルギー密度
ウルトラキャパシタ 高出力密度、長寿命
フライホイール 高出力密度、長寿命

 

 

 

 

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